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女の友情・男の愛情 |
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![]() ≪壱≫ 今までで一番過酷な戦闘を乗り切った疲労感を癒し、そして女同士の友情を深めようという目的で、龍麻は、葵・小蒔の他、今回の戦闘の功労者である織部姉妹と裏密ミサと一緒に、ちょっとリッチかなとは思ったが、タイムズスクエア内にあるお気に入りのティールームで遅めのアフタヌーンティーをすることにした。 目の前に3段に重ねられたお皿に盛られた数々のデザートと、鼻腔をくすぐるお茶の芳香を楽しむうちに、6人はしっかりと元気を取り戻していた。 「ところで、さっき龍麻だけ龍山のじいさんと何か話してたけど?」 雪乃が一口サイズのサンドイッチを口に頬張りながら、龍麻に訊ねる。 隣に座る雛乃は、全く同じタイミングでサンドイッチを手にしながら、まだ半分も食べ終えなかったので、半瞬間を空けてから姉の言葉を補足する。 「始めの内は珍しく少しお怒りのご様子でしたし…。立ち入った内容でしたら無理にお話しにならなくても結構ですけれども」 「そうね。皆気を悪くするかもしれないけれど…話を聞いてもらおうかしら」 龍麻はそう一言断り、手にしたティーカップの中のアッサムティーで喉を潤してから、先程の龍山とのやり取りを話した。 雪乃と雛乃を迎えに行くために、龍麻と小蒔の2人で龍山の庵に向った。<葵と裏密は先にお店に行って場所を取ってもらっていた> 無事な姿を見せた2人を、龍山は温かい笑顔で迎えてくれた。だが── 『龍山先生、少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか』 龍麻は口調は丁寧だったが、その表情にはやや怒りの分子が混じっていた。 『ほっほっほ。そんな顔をしたらせっかくの別嬪さんが台無しじゃよ』 『………』 『お主の言いたいことは、あれじゃろう』 龍山は真面目な顔に戻すと、少し離れた所に龍麻を導いた。 『何故わしが雄矢がここにいると言うことをお主らに告げなかったのか。お主らが心配しているのを知りながら…』 『!!』 自分がぶつけたかった言葉を切り出す前に言われてしまい、しばし絶句する龍麻だったが、素直にその通りですと頷いた。 龍山は真摯な龍麻の表情を見て、本当に雄矢は幸せ者だと言い、 『だがな、あの時お主らが来た所で、恐らく雄矢は自分の内に閉じこもったままじゃったろう…。龍麻、お主にもその経験が有ったのだから、そのことは想像できるはずじゃ』 その言葉を聞いて、龍麻は強い衝撃を覚えた。 <なぜ、この人は私の過去を知っているの…?> 『不思議そうじゃの、だが、わしの生業は一応占い師じゃ』 その位はお見通しだと、いたずらっぽい目をして龍山は龍麻の心を見透かす。 『そうでしたね。確かに私も醍醐君と似たような経験をしました。そしてその時、大勢の人たちから励まされ、慰められましたけれど…でも…』 でも本当に心が癒されたと思った時はなかったと告白した。皆の心遣いが、かえって自分が罪深い行為を犯したのだという事実をまざまざと突きつけてくるように感じられて、居たたまれなくなった。 『ですので自分の武道の師から、東京の新宿、真神学園に行くように言われた時は、正直ほっとしました』 少なくとも周囲に自分を知る人が少なくなる。ひいては自分の罪を知る人も…。だからこそ、自分は他人と関わらないように振舞おうと決心したのだった。罪にまみれるのは、自分1人で十分だと───。 『雄矢も同じ気持ちだったのじゃろう、あの時まで。自分1人で全てを被ればよいと』 だが、それでお主たちは納得出来たか?と問い掛けられる。 『いいえ』 自分たちも同じ十字架を背負うことで、少しでも友の負担を軽くしたい、そう願ったのは紛れも無い本心だった。 そこには損得などという次元は無かった。 <あッ…> 龍麻はここまで考えを巡らせて、ようやく龍山の言葉の意味を本当に理解できた。 ──私も同じだった。莎草君の時も紗夜を失った時も、皆の気遣いが鬱陶しいと思っていた。 でもあの時の皆の気持ちは、私が今回醍醐君に抱いた想いと同じだったのね。 それなのに私は…。自分の罪から、ううん、罪を負った自分自身から目を逸らすことにつながると気が付かず…皆の気持ちから心を閉ざしていた。 そんな私を叱咤し、目覚めさせてくれたのが……京一だった。 『彼が本気をぶつけてくれなかったら、私は今もまだ1人迷路を彷徨っていたかもしれませんでした』 『雄矢にとって、本気をぶつけてくれたのがあの嬢ちゃんじゃ』 2人は、雪乃や雛乃と楽しそうに話をしている小蒔を遠目に見た。その様子はもう普段の快活な彼女そのものだった。 「龍麻…」 葵が心配そうに顔を向けてきた。龍麻の過去の話は今まで自分たち4人にしか明らかにしていなかったからだ。 「いいのよ、葵。いずれは皆にも話そうと思っていたのだから。いつまでも黙っていることは、皆を騙していることにもなるし…」 その結果皆がこの先も仲間となってくれるのかどうか、どう判断してくれても、それは一向に構わないと龍麻は微笑んだ。 「龍麻」 「龍麻様…」 「…………」 雪乃と雛乃は同時に呟いた。裏密は恐らく彼女の≪力≫で以って、粗方の事情は知っていそうだったが、しかし当人から直接話をされたのは初めてだったので、珍しく黙り込んでいる。 だが、カップの中のお茶が冷める間も与えず、3人は逆に笑顔を龍麻に向けた。 「嬉しいぜ、龍麻。俺たちにそんな辛い話までしてくれて。…それだけ俺たちを信頼してくれてるってことだろ。その気持ちに応えられないようなら、オンナがすたるってもんだぜ。なあ雛乃」 「ええ、姉様。こういう言い方は不遜かも知れませんが、私たちが龍麻様と初めてお会いして、そして抱いた想いに間違いは無かったという気持ちが一層強まりましたわ。龍麻様ならきっと≪力≫に目覚めた私たちを間違いのない方向に導いてくださる…。それも≪力≫に溺れた手段ではなくて、もっと慈しみのお心に満ちた方法で」 「んふふふふ〜。わたしはひーちゃんの≪力≫に興味津々なんだけど〜。でも〜それ以上にひーちゃんの真心が心地よいわ〜」 それぞれがそれぞれの言葉で、今の龍麻を友として迎え入れてくれている。それが分かったので、龍麻は少し目頭が熱くなった。 「ごめん…せっかく楽しくお茶していたのに、深刻な話になっちゃって…」 「何言ってんだよ、最初にこの話を振ったのは俺の方だぜ。謝らなきゃならないのはこっちの方だ」 慌てて雪乃が話を別の方向に持っていこうとする。 「で、小蒔。お前、いったいぜんたい、あの醍醐ってヤツをどうやって立ち直らせたんだよ」 「えッ、えッ!!」 小蒔は急に顔を真っ赤にして慌て始め、その動揺からカップに入ったお茶をテーブルに零す。 「うふふ、小蒔ったら」 葵も先程の小蒔と醍醐の微笑ましい光景を思い出したのか、すかさずそれを拭取りながらも、やはり興味に満ちた目を向ける。 「そんな、ボク大したコトしてないし…」 ちろっと横目で見ると、龍麻は何やら含み顔をしている。 「ま、まさかッ、おじいちゃんから何か話を聞いたのッ?」 「……まぁ、ね…」 小さく呟くと、 <龍山先生ったら〜。黙っていてくれれば良いのに、何も私に言わなくたって> 心の中で思わず文句の1つをも吐き出してしまう。 『いや〜、久々に良い物を見させてもらったのう。熱いbaiser(ベーゼ)を』 頭の中では龍山の言葉が反芻し、やや頬を桜色にすると、龍麻も目線のやり場に困ってしまう。 「龍麻様まで頬を赤くされて、一体どのようなことが有りましたの?」 その場でただ1人、全く事情を察することの出来ない雛乃の純真無垢な一言が、2人に追い討ちを掛ける。 「んふふ〜、ミサちゃ〜んの≪力≫で見せてあげようか〜」 いつの間にやら裏密の手には愛用の水晶球が現れていた。 それを止めようとする龍麻と小蒔に、迂闊に触ると呪われちゃうぞと脅しに近い言葉を返してきたので、2人は諦めて事態が終るのをただ待つことにした。 「…………」(爛々とした目) 「……………」(異世界を覗いた時に洩らす感嘆の息) 「………………」(やや硬度を増した微笑) 「終ったよ〜」 裏密の言葉が終了を告げても、しばらくは無言のままの3人だった。 居たたまれず顔を伏せている小蒔と、それを気遣う龍麻の耳には、だが次に信じられない言葉が飛び込んで来た。 『おめでとう、小蒔(様)!!!』 「へッ?」 文字と同じ口の形をしながら、小蒔が顔を上げると、友人たちは口々に喜びの言葉を投げかけてきた。 「やったぜ、小蒔。お前にもようやく春が来たなッ!」 「小蒔様と醍醐様…お似合いですわ。是非祝言を上げる時は、織部神社でどうぞ。わたくし、心を込めてご奉仕させて頂きます」 「うふふ、その時には私も友人としてお祝いの言葉を贈らせてもらうわね」 「ミサちゃんも〜2人の幸せを(魔神に)祈ってあげるね〜」 「………こういう時、20歳を過ぎていたら祝杯を上げられるのに」 最後に龍麻までもが予想もしなかった皆の反応に煽られて、ぼそっと本音を洩らした。 「み、皆〜。ボクと醍醐クンはまだそんな仲じゃ〜」 しかし小蒔の言葉を遮って、これで公認カップルの誕生だとその場はお祝いムード一色になった。 「これで第一号か…」 「あら、姉様。それは違いますわ。龍麻様にも──」 「違うのよ、雛乃さん。龍麻と京一君はまだ公認されていないのよ、皆からは」 にっこりと葵がそう断言する。 その微笑を前にしては、他の誰も異を唱えることは出来なかった。 ≪弐≫ 翌月曜日の朝、小蒔がいつものように後輩の朝練の指導をする為、早目に教室に入る。すると、そこには 「…あ、醍醐クン…」 「おはよう、桜井…。ず、随分朝早いな」 日課である部室での早朝トレーニングの為に、醍醐も姿を見せていた。 「……………き、今日はいい天気だねッ」 「……………か、体を動かすには気持ちの良い季節だな」 ご近所さん同士で差し障りのない会話として好まれる、お天気と季節ネタで話を済ませると、2人はそそくさとそれぞれの部室に向ってしまった。 <ダメだ〜。皆にカップルなんて言われちゃったから、却って醍醐クンの顔をまともに見られなくなっちゃったよ> その朝の小蒔の射撃は、ことごとく的を外す悲惨な状態だったと、指導を受けた後輩は語った。 一方の醍醐も、部室にあるトレーニング機材を1つオシャカにしてしまい、それでなくてもここの所問題続きなので、来年度の予算減確実な部の行く末を憂う副部長を嘆かせたとか…。 「小蒔、どうしたの?さっきから溜息ばかりついて」 芝生の上でお弁当を食べながら、葵が心配そうに訊ねてきた。 「そうね、今日は食欲も無いようだし」 龍麻も小蒔のお弁当の中身が殆ど減っていないことに、これは只ならぬ事態だと思った。 「…え、そんなコトないよッ」 2人の言葉を否定するように、果敢にフォークをタコさんウインナーに突き刺そうと試みた時、背後からそれを掻っ攫われてしまった。 「へへッ、頂きッ」 「京一〜ッ!!」 小蒔の抗議を涼しく受け流し、口に入れたウインナ─を食べ終えると、油断している小蒔が悪いと逆襲する。 「油断なんかッ。キミと違って、ちょっと考えゴトしてただけだよッ!!」 「へいへい、そーですか。俺はてっきり醍醐のヤツと夫婦喧嘩したのかと」 「!!!」 小蒔が手にしたお弁当箱を下に落下させそうになったので、龍麻は慌ててそれを左手で受け止め、そして安堵の息を1つついたところで、きっと京一を睨みつける。 「京一、それどういう意味なの?」 「ひーちゃんに怒られる理由はねェと思うんだけど…一昨日の別れ際に見た光景を想像して言っただけだぜ」 身を少し縮めながら、京一は自分の発言の理由を述べる。 「けどよ、アイツもまた何だか様子がおかしいし。ラーメン屋でからかい過ぎたか…」 昼飯のヤキソバパンも殆ど口にしてないと、京一が醍醐の様子を証言した。 「勿体無いからそのパンは俺が食ってやったけど、アイツ、ずっと屋上で空ばっかり眺めてやがってよ。…まだ吹っ切れてねェのかもな」 京一の最後の言葉を聞いて、小蒔は反射的に立ち上がりたいという衝動を覚えたが、気恥ずかしさが先行して、じっとその場に座るように自分に言い聞かせた。 「ふむふむ、成る程ね。それじゃあ京一からは後でゆっくり一昨日の事情を聞き出すとして…」 龍麻は自分のお弁当のおかずを、小蒔のお弁当箱の中に詰め込み始めた。 「葵もちょっとおかずを分けてくれる?」 「勿論よ」 あっという間に、小蒔のお弁当箱の中身が2倍に膨れ上がった。 「さ、これを持って醍醐君のところへ行ってちょうだい、小蒔。 いくらなんでも朝練した上でのお昼抜きじゃ、醍醐君空腹でひっくり返ってしまうわ」 「確かに…それは遠慮したい未来図だぜ」 かつて1人で醍醐を保健室まで運んだ経験を持つ京一が、妙に納得した顔で頷いた。 「…うん、そうだね。ありがとう、ひーちゃん、葵」 醍醐と話すきっかけをくれた友人たちに感謝しながら、小蒔は屋上に向った。 小蒔を笑顔で見送った後、龍麻は京一の方を同じ笑顔のままで振り向いた。ただしその目は小蒔に向けたものと違い、既に笑っていなかった…。 「さてと、京一。それじゃあ一昨日の話をここでキリキリと吐き出してもらいましょうか」 「うふふふ、龍麻。それじゃ、まるでアン子ちゃんみたいね」 愉快そうに相槌を打つ葵は、さりげなく京一が逃げ出せないように背後を固めていた。 「うッ、そ、それは…」 「それは?」 穏やかな口調の龍麻だが、微かに左手に≪氣≫が溜められているのは、その場の2人にもすぐに感じ取ることができた。 <い、言えるかよッ。ひーちゃん争奪戦のライバルを減らす為に、醍醐と小蒔を公認カップルにすることで、仲間内恋愛を推進し、その結果として他の独りモンにも、ひーちゃんっていう高嶺の花じゃなくてもっと手近な女のコに目を向けさせようと仕向けた俺の計画を…> 京一は自分の計画を正直にバラすか、それともここで大人しく龍麻の技を一発喰らうかの選択を迫られていた。 一方─── グラウンドから屋上まで小走りで向かったので少し乱れた息と、それだけが理由でない胸の動悸を深呼吸で整えると、小蒔は醍醐のそばへと真っ直ぐに近づいた。 「醍醐クン。お昼一緒に食べよッ」 「桜井…」 小蒔はさっさと醍醐の傍に座ると、持ってきたお弁当箱を広げ、 「ほら、早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ」 姉が弟を叱るように、半ば強引に醍醐もその場に座らせる。 「済まないな…」 「いいって、これボクのおかずだけじゃなくて、ひーちゃんと葵のお弁当のも分けてもらったから、味は保証付きだよ」 そう言いながら、ちょっと食べにくいけれど、これを使ってと、デザートのリンゴに刺さっていた爪楊枝を醍醐に差し出す。 「……美味しい?」 「ああ」 デカイ図体に反比例して、ちっちゃな爪楊枝を使って食べている醍醐の姿があまりにも不釣合いだったので、小蒔は笑いがこぼれてしまった。 「…良かった。朝から様子がおかしかったから。でもやっぱりいつもの桜井だな」 「醍醐クンだって、いつもの優しい醍醐クンだよ…」 えへへと照れ笑いを浮べる小蒔に、醍醐は昨日龍山の所にお礼を兼ねて挨拶しに行ったのだと話した。 「その時に、俺を助ける為に、お前がどんなに身を挺してくれたか教えられて…。 本当、情けないよ自分が」 「何言ってんだよッ。いっつも戦闘の時は醍醐クンがボクを、ボクたちを身を盾にして護ってくれるじゃない!だから…」 たまにはボクが醍醐クンを護ったっていいじゃないと小蒔は反論した。 「そうか…」 だがまだ醍醐は何か引っかかっているような表情をしていた。それを見て、小蒔はもしやと思いながら、恐る恐る訊いてみた。 「もしかして、醍醐クンもおじいちゃんから聞いたの…?」 「それは違う…。俺はあの時──」 醍醐はあの時、あの状況を見聞きしていたのだった。だが、現実世界から逃避したい気持ちが強すぎて、自分の意識を自分の体と結びつけることが出来ないでいたのだった。 それは何よりも辛い体験だった。目の前で大切な人が危機に陥っているのに、指1つも動かすことが出来ずにいるもどかしさ。声すらも出せない焦り…。 「だが、そのッ…お前が、俺に触れてくれたから…。お前が俺にこの現実世界を認識させてくれたから、俺は自分の意識と体を取り戻すことが出来た…」 「…醍醐クン…、それじゃあ…」 「悪かったと思っている…お前の…」 ファーストキスをあんな形で奪ってしまって、と言いたかったのだが、それ以上は口にすることが出来なかった。 「京一を怒れないな、俺も…」 醍醐にはこう言うのが精一杯であった。 「そんなッ、ボクこそ、醍醐クンに無理矢理……。と、とにかくッ、醍醐クンが気にするコトじゃないからッ!」 そう言うと、恥ずかしさを隠す為に、小蒔は海老チリソースを口に入れて咀嚼することに専念した。 醍醐も沈黙を紛らわせる為、唐揚げに爪楊枝を突き刺したが、力が入り過ぎて、ポッキリと根元から折れてしまった。 <しまった…> 内心冷や汗をかいている醍醐の目の前に、小蒔がフォークに突き刺した海老を差し出す。 「これ食べて」 「え、いいのかッ」 しかしそれでは(間接キスになってしまう)と醍醐は首を横に振る。 「いいって、もう。じれったいな〜」 小蒔は末の弟にしてやったように、手馴れた様子でフォークを強引に相手の口に突っ込ませた。そして、突然のことに目を白黒させている醍醐を、からかうように見ていた。 いつの間にか空っぽになったお弁当箱を片付けながら、小蒔はまだ照れている醍醐に優しく声をかける。 「これからはボクの喜びも悩みも醍醐クンと半分コにする……だから醍醐クンの喜びと悩みも半分コしようよ」 今まで見たことの無い小蒔の柔和な微笑を受けて、醍醐も同じように微笑で返す。 秋晴れの空の下、改めてお互いを大切な人として認め合うことが出来た喜びで一杯の醍醐と小蒔の耳には、校庭の片隅から聞こえてきた謎の爆発音は届かなかった。 |
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